積層可能な10Ah水素/空気二次電池を開発 ~ 10Ahセルについて安定な充放電性能を確認 ~


2020年11月9日
FDK株式会社

 FDK株式会社(代表取締役社長:長野 良)は、大規模蓄電池用次世代電池の一つである水素/空気二次電池の開発に取り組んでおり、今回、10Ahの積層可能な水素/空気二次電池を開発いたしました。

 本開発品は、今後、低炭素社会の実現に向け、ますます需要が期待される再生可能エネルギーを貯蔵し需要に応じて電力供給し、災害発生時には、停電対策にもなる蓄電池システム用途向けを想定しております。これまでの蓄電池システムで使用されている電池材料には可燃性や発火性の物質を使用されているため、大きな火災につながったといった安全面の問題や、環境に影響を及ぼす材料使用による環境面および設置場所が制限されるなどの課題があり、当社は、このような課題について、既存事業で培ったニッケル水素電池の技術をベースにニッケル正極を空気(酸素)に変えた水素/空気二次電池を開発しております。
 本開発品は、電解液に水溶液性のアルカリ電解液を使用するため燃焼性が極めて低く、大型化しても安全性が高い点に加え、正極活物質に空気(酸素)を用いるため、正極容量は無制限であり、高エネルギー密度と高安全性を兼ね備えているため、本開発品を用いた蓄電池システムは、従来の蓄電池システムをよりコンパクト化することができ、設置場所を選ばない特長を有しております。

 水素/空気二次電池は同志社大学大学院の盛満正嗣教授の研究室で研究開発が始まり、2012年10月より国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)・戦略的創造研究推進事業・低炭素化技術開発(ALCA)の支援を受けて、盛満教授を代表者とする研究チームに当社も参画し、要素技術開発が行われました。また、2019年4月からは、環境省・CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業に採択され、当社を代表者として、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを蓄電し、需要に応じて供給することにより、CO2削減に貢献できる蓄電池システム開発を目的に進めております。

 今回開発した積層可能な10Ahセルは、模式図の通り、正極(空気極)と負極(水素吸蔵合金(MH)極)とセパレータや空気を送り込む流路を流路板等の部材をひとつのセットにして重ねていくバイポーラ型と呼ばれる構造により、多直化が容易で低抵抗化も可能です。
 開発した10Ahの単セルを充放電の評価をした結果、図の充放電カーブに示す通り、10Ahの容量を確認するとともに、5A(62.5mA/cm2)の電流値で充放電を繰り返しても安定した充放電挙動を確認できました。5Aの充放電サイクル後に容量を確認したところ、サイクル前と同様の容量を確認できました。

 今後、開発した10Ahセルをベースに1kWh級のモジュールで蓄電池システムを構築するとともに、太陽光を中心として再生可能エネルギーと組み合わせた実証模擬実験を2021年度に実施する予定です。将来の水素/空気電池の事業化に向けた更なる高出力化・高耐久化、量産化、低コスト化などの検討を継続し、2022年度の量産化に向けて取り組んでまいります。

水素/空気二次電池の電池構造の模式図 2直列10Ah積層セル
水素/空気二次電池の電池構造の模式図 2直列10Ah積層セル
10Ah単セルの1-101サイクルの充放電カーブ
図 10Ah単セルの1-101サイクルの充放電カーブ
1-3,100サイクル 充電 1A(0.1It) x 10hr、放電:2A(0.2It)E.V. = 0.4V
4-99サイクル  充電5A(0.5It) x 24min、放電:5A(0.5It) x 24min

以 上

本件へのお問い合わせ: FDK株式会社
経営企画室
TEL:03-5715-7403


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